昔得意だったことを続ける意味
認知症のある方と過ごしていると、「最近のことは忘れてしまうのに、昔のことはよく覚えている」という場面に出会うことがあります。実は、認知症ではすべての記憶が同じように失われていくわけではありません。だからこそ、その方が昔から得意だったことや好きだったことを、今の暮らしの中でも続けることには大きな意味があります。

1.昔のことは憶えておられることがあります
認知症の方でも、長年の生活の中で身につけてきた習慣や経験、身体で覚えた動作などが残っていることがあります。
例えば、昔から料理をしてきた方が包丁ではなく安全な道具を使って野菜を切ったり、洗濯物をきれいにたためたり、歌が好きだった方が昔の歌を口ずさんだりすることがあります。「もうできないだろう」と決めつけず、できることを見つけてみることが大切です。
2.記憶には「時期」による違いがあります
認知症では、一般的に最近起きた出来事を覚えておくことが難しくなる一方、長い年月をかけて身につけた記憶や経験が比較的保たれている場合があります。
そのため、「今日の朝ごはんは何を食べましたか?」には答えにくくても、「昔はどんな仕事をされていたのですか?」と尋ねると、当時のことを生き生きと話してくださることがあります。
昔の経験を活かした活動は、単なるレクリエーションではありません。「自分はこれが得意だった」「これならできる」という感覚を取り戻し、安心感や自信につながることがあります。
3.そんな方への接し方
大切なのは、昔のことを無理に思い出してもらうことではありません。ご本人が自然に楽しめることを見つけ、できる範囲で続けられるようにすることです。
「昔は料理がお得意だったんですよね」「この歌、よく歌われていましたね」と声をかけ、一緒にやってみるのもよいでしょう。上手にできるかどうかよりも、「やってみたい」「楽しい」と感じられることを大切にします。
グループホームでは、ご本人のこれまでの暮らしや仕事、趣味、得意だったことを知り、その人らしい役割につなげることを大切にしています。昔得意だったことは、過去の思い出だけではありません。今の暮らしの中で、その人らしさを支える大切な「力」になることがあります。




